Amishの人々。
この地を初めて訪れるまで、アーミッシュ(Amish)という存在を知らなかった。
アーミッシュとは、電子機器や車などの現代技術を使わずにシンプルな生活をする人々のこと。
ここペンシルベニア州とオハイオ州、カナダの一部が主に彼らが住んでいる地域。
移動するのは歩きかバギー。
車に紛れてバギーが普通に走っているから、
初めて見る人は驚くかもしれない。
今回の旅で初めてスクーターを使うアーミッシュを見た。
自転車を使った方がいいのでは…とホストマザーと首を傾げていた。
彼らは基本的に、自給自足。
みんな広大な農場を持っている。
アーミッシュのものかそうでない人のものかを判断するには2つ目印がある。
まずは円柱型の建物。
「サイロ(silo)」と呼ばれる倉庫のようなもの。
セメントで作られており、中にはトウモロコシの茎や穂がたくさん詰まっている。
トウモロコシの水分が植物や穀物を発酵させ、それを牛や乳牛に与えるのだ。
「サイレージ(silage)」と呼ばれる貯蔵性牧草。
ホストマザーはこれを「牛に与えるキムチよ!」と笑っていた。
サイロへはホースでトウモロコシを入れる。
梯子が付いていて、満タンに入っているかどうかも確認することができる。
サイロの底にはドアが付いていて、そこから餌をすくい出すことができる。
ただ、サイロは別にアーミッシュだけが使っているものではない。
アメリカのカントリーサイドならどこでも見かけるし、
他の国でも見られるのかもしれない。
青くて背がもう少し低いサイロが多いのかも。
冬に備えて、家畜に与える餌をここに蓄えている。
でもアーミッシュの農家では必ずと言っていいほどサイロが使われている。
だからアーミッシュのコミュニティではまずこれが目印になると思う。
2つ目の見極めポイントは、その農場にトラクターなどの機械が置いてあるかどうか。
さすがにこんな大きなトラクターがあったら、アーミッシュの農場とは言えない。
もちろんだから悪いということは全く、あくまでも判断材料。
服装はみんな似ていて女性だとシンプルなワンピースに頭にレースの被り物をしている。
アーミッシュの服装を頭に浮かべていて思ったのが、
ほとんど女性しか見た記憶がないということ。
街中を歩いているのは女性が圧倒的に多いのかもしれない。
男性は、シャツにサロペットにハット、というのがスタンダードな格好。
女性も男性も、普段からとてもシンプルな生活をしている。
アーミッシュの小学校
10年以上前に、ある自分の子供を失った男性が
アーミッシュの学校に通う子供たちを惨殺したという事件が起こった。
学校に柵が取り付けられて隔離されるようになったのはそれから。
常に大人が見守って一緒に屋外で遊んでいる。
事件後、彼らはその犯人を、葬儀場に招いた。
「私たちはすごく悲しいし悔しい。でも、あなたを許します。」
この話をホストマザーから聞いた時、とても信じられなかった。
ホストファミリーと初めて暮らした時、キリスト教について色々と教えてもらった。
おそらくこのアーミッシュの言動は、キリスト教徒だからこそのものではないか。
宗教については深い知識がないし、もしかしたらそうではないかもしれないから
断言することはできないが、いずれにせよ人の心を最大限に広くした言動である。
アーミッシュの子供は、成人に近づくと
「アーミッシュとして生きるか」
「アーミッシュの外の世界で生きるか」
この選択を迫られる。
どちらを選んでももちろん悪いことはない。
単純に、どんな家族に育てられたか、そんな教えを受けてきたか、
外の世界に触れて自分が何を感じたか。
この時期に、アーミッシュの外の世界で生きていくことを決めたのが、
ホストグランドマザー。ホストマザーの母親だ。
彼女は昔アーミッシュだった。
そう言われないと分からないくらい現代的な暮らしをしているし
スマホだって使いこなしている。
アーミッシュが嫌いになったわけじゃない。
むしろ、彼らのことをたくさん教えてくれる。
クリスマスプレゼントもアーミッシュのブローチだった。
自分の娘にもそうしていたからこそ、
アーミッシュに親しみを持って接し
ホームステイしにくる学生たちに色々と教えてくれるような
そんなホストマザーが誕生したんだと思う。
6年前ホームステイしていた時は、
ランカスター周辺のCIH(Christmas International House)のプログラムとして
学生10人ぐらいをアーミッシュの家に招待してくれた。
その時私のカメラは充電が切れた状態で使い物にならなかったため
全部頭の中の記憶でしかないが(本当にバカなことをしたと思う)、
そのアーミッシュツアーで彼らを好きになったのは確か。
バギーに乗って畑の周りを走ってくれたり
家の中を少し紹介してくれたり。
大人数で長いテーブルを囲んで食べたアーミッシュディナーは
美味しいジャガイモが多くてお腹が苦しくなるまで食べた。
家の中の照明は薄暗く照らされる物の色がはっきりとしない感じ。
電化製品は使っておらず、貯蓄しているガスや燃料で全て賄う。
余計なものは何もない。家族で協力し合って日々過ごしている。
そんな彼らのシンプルな生活が魅力的だと思った。
アーミッシュには様々なタイプがいる。
現代技術から完全に距離を置いている家族。
現代技術を少しだけうまく取り入れていつ家族。
なんの抵抗もなく現代技術を取り入れている家族。
どのタイプも、みんなアーミッシュ。
中には、近所の家に電話があって、
「〇〇さんから電話があったよ」と知らされて
電話を借りにその家のお邪魔する人もいるくらい、
彼らの生活は多種多様。
現代技術の奴隷のようになっている今だからこそ、彼らの信念が好き。
私も基本的にはアナログ派でデジタルデトックスを1週間でもしたいと思っているが
やっぱりスマホやパソコンを放っておくと気になるし、
映画や野球などの動画が恋しくなってしまう。
デジタルに頼れば荷物も減るし、とても便利。
でもその分、気付かないうちに心も体もストレスが溜まってしまう。
彼らを見ていると、シンプルにナチュラルに生きる快適さを思い出させられる。
また、アナログな部分を増やしていこうかな。
たくさん通るバギーの中に、
時折完全に現代的な服装をした人たちの団体が乗っているのを見かける。
これは観光客用のバギー。
近頃はアーミッシュツアーに参加する人が多く、
彼らの暮らしを一目見たいとランカスターに足を運ぶ人もいる。
アーミッシュの人たちはこれを拒まないが、
彼らのうちの一人でホストマザーの友人は
「なぜ普通に暮らしているだけなのにこんなにジロジロ見られるのか。weirdだわ」
とたまにこぼすことがあるらしい。
そんなツアーに参加しようとしている人たちには注意しておいてほしいことがある。
それは、彼らの写真を撮るときは”距離を十分に取る”ということ。
彼らは写真を撮ろうとすると、顔を背けるらしい。
なぜなら、自分たちの顔が映ることで「アーミッシュとはこういう人」という
イメージが植え付けられてしまうからなんだそう。
だから、完全に距離を置き、彼らが不快に思わないように努めてほしい。
顔もなるべくはっきり写らないように。
そもそもコミュニティの中では撮影禁止というのも聞いたことがある。
この地に来なければ、おそらく人生で関わることのなかった人たち。
外に出ることで、知らない場所を訪れることで、
知識が広がり人生が豊かになっていく。
それを教えてくれたアーミッシュの人方々と、ホストファミリーに感謝。
もっと世界の色んな人と会ってみたいなと思った。
日本というガラパゴスな国で生まれ育った方こそ、
自らの足で外に赴き、世界を理解して行きたい。